触ると固いのに肩こりを感じない人の特徴
マッチ鍼灸整骨院では問診後の評価の一つに触診を大事にしています。
それは何故かというと、腰や手足がメインの痛みがあっても肩や首に原因の可能性があるからです。
触診による評価をしている際に肩の筋肉がガチガチに張っているのに肩こりを感じない人が少なくありません。
ガチガチに固くなっている場所は押すと痛みを感じたり、トリガーポイントの発生時には放散痛という関連部位にしびれのような響きを感じる事があるのですが、触られている感覚があるもののその他の反応は全くないというのは評価する側からすると異常なしという事になってしまいますが、明らかに異常を起こしているこの現象は解剖学や生理学的な視点から今後施術をしていくうえで非常に興味深いと感じています。
肩こりを感じない5つの理由
肩こりは疲労や不良姿勢の影響により肩周りの筋肉が緊張し、血行障害を引き起こすことで痛みを伴う状態なのですが、実は全ての人が同じように症状を感じるわけではなく、肩は凝っているのに肩こりを感じない人がいるのです。
その理由を解剖学的・生理学的な視点からこれから詳しく説明していきます。
1. 肩の筋肉の運動制限
肩の筋肉は大きく分けて「表層の筋肉」と「深層の筋肉」に分類されます。
表層には僧帽筋や三角筋などの大きな筋肉があり、肩の動きや姿勢を保つ役割を果たし大きな力を発揮します。
深層には肩甲挙筋や菱形筋があり、肩甲骨を支え、細かい動作を調整しています。
肩こりはこれらの持続的な緊張で起きる事が多いです。
しかし、肩周辺の筋肉が過度に使われると筋肉に疲労物質が蓄積し、血行不良により凝り固まっていきます。
その影響で肩周辺の筋肉や背骨の動きが制限され、身体が動かしにくい状況にになると逆に痛みや不快感を感じにくくなることがあります。
2. 肩こりの痛覚と感覚の違い
実は、筋肉が緊張しているからといって必ずしも痛みがは発生するわけではないのです。
これは生理学的な視点から説明することができます。
痛みや不快感を感じるためには、身体がその信号を脳へ伝達し、脳がそれを「痛み」として認識することが必要です。
脳が痛みを認識するには感覚神経系が大きく関わっています。
痛みを感じるための重要な要素はノシセプターという痛覚受容体によるもので、これらは組織が損傷を受けたり過度に刺激されたときに反応し、脳に痛みの信号を送ります。
しかし、肩の筋肉が緊張していてまだ組織の損傷が少ない場合は、痛覚受容体が刺激されない場合もあります。
このような場合は筋肉が張っていても痛みや不快感を感じないことがあるのです。
しかし、筋肉が張って固くなってる状態には変わりなく、日常動作や寝起きに急に動いた時などに組織の損傷がおこる可能性が高い状態で損傷を起こすとその際の痛みは強く現れます。
3. 神経による痛みの鈍化
先ほどは筋肉の中の話でしたが、今回は自分で押したり、術者が押したりした際の他覚的な痛みの話です。
人によっては、表面から触れた際に筋肉がガチガチにに凝っていたとしても、肩こりを感じていない方や、普通なら押されたら飛び上がるほどの痛みを感じてもおかしくない筋肉の固さであっても押された感覚した感じない方がいます。
美容室で肩を揉んでもらった時に
「お客さん肩こってますねー」
と言われて、
「別に肩はこってないけど・・・」
と思った肩に多くみうけられます。
では、肩がガチガチに凝り固まっている人がなぜ肩こりを感じないのでしょうかあ?
この現象は、神経の適応や感覚閾値の違いに関連しています。
中でも閾値の変化には環境的な要因と先天的な要因があると考えています。
環境的な閾値の変化
神経は繰り返し同じ刺激を受けると、その刺激に対して鈍感になることがあります。
例えば、長時間デスクワークをしている人、同じ姿勢で作業を続けることが多い人は、肩の筋肉が慢性的に凝り固まっていてもその凝りに体が慣れてしまい、痛みを感じにくくなることがあります。
これを痛みの閾値が上がると言います。
逆に強いストレスや精神状態の不安定な状態になるとこの感覚閾値が低下し痛みやストレスに過敏に反応してしまう事もあります。
先天的な閾値
日々施術をしていると閾値のバロメーターは先天的にある程度決まっていると感じます。
それは何故かというと、施術の対しても弱い刺激でも過敏に感じる人もいれば全くと言っていいほど感じない人がいるからです。
マッチ鍼灸整骨院では細めで少ない本数で行う鍼治療と比較的ソフトなオステオパシー整体を得意とした治療をおこなっていますが、他院では太いくて沢山の鍼を刺す強刺激な鍼治療や骨から筋肉をはがすような激痛を伴なうハード系の整体院もあり、ハード系の施術は苦手な方もいれば、ソフト系の治療では物足りず痛くないと効いていないという人もいます。
患者さんの苦痛を取り除くという目的はどちらも変わらないですので、施術に対する閾値が低い方はソフトな治療、閾値が高い人はハード系の治療を選択する傾向があります。
4. 自律神経と肩こりの関連
自律神経系による影響も肩こりの感覚に影響を与えます。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、筋肉の緊張や緩和を調節しています。
ストレスによる緊張状態が続くと交感神経が優位になり、無意識に筋肉を緊張させる動作をしたり筋肉への血流が悪くなることで肩がこりやすくなります。
しかし、交感神経の緊張状態が過剰になった状態が長く続くと、逆に痛みに敏感に感じる痛覚過敏になったり、やその反対に痛みを感じにくくなる痛覚鈍麻状態になることがあります。
慢性的にストレスを受けている環境にいる場合、表面の筋肉緊張が強く、指圧などによる痛みを感じにくくなることがあります。
マッチ鍼灸整骨院では背中を押す評価法があるのですが、感覚鈍麻になっている方は背中の筋肉がガチガチになっている自覚がない方が多いです。
5. 心理的要因
肩の筋肉が張っていても痛みを感じない状態になっている方は心理的な要因が関わっていることがあります。
強いストレスや何かに集中している時、精神的な疲労があると、身体の不快感や痛みに対して鈍感になることがあります。
この状態は心理的鈍感化とも呼ばれていて、意識が他の問題に集中しすぎてしまうことにより、筋肉の張りや軽度な損傷を軽視してしまう状態になります。
日常的に身体の痛みを強く感じる人と、あまり感じない人がいるのは、心理的な耐性が個人差によることも一つの要因になります。
対処法
肩の筋肉が張っているのに痛みを感じない場合、その状態を放置していては閾値を超えた時には症状がかなり深刻な状態になっていることが多いため、自覚症状がない場合でも早期の対策をとることが大切です。
なぜなら、筋肉の緊張が続くとことで血行不良や疲労物質の蓄積が進行し、後になってから強い痛みや不調を感じることがあるからです。
予防や改善を図ることが重要です。
- 筋膜リリース
凝り固まった筋肉をいきなりストレッチなどで伸ばすと筋肉を傷める可能性があります。
この場合、まずは筋肉を緩めることからはじめましょう! - ストレッチ
筋膜リリースなどで筋肉を緩めたら、肩周辺の筋肉を伸ばすことでにより筋肉の柔軟性を回復させ、可動域を広げます。 - 姿勢改善
デスクワークなどで長時間の同じ姿勢を避け、ディスプレイを猫背にならない高さに調節するなどで正しい姿勢を意識することが肩周辺の筋肉の負担を軽減します。 - リラクゼーション
ストレスを感じている方はストレス対策が必要な場合があります。
積極的な休息、マインドフルネス、深呼吸やヨガを取り入れることで、交感神経の過緊張を防ぐことができます。
肩こりを感じない人まとめ
肩こりは多くのひとが抱える問題の一つですが、肩の筋肉が張っているのに肩こりを感じない人がいます。
その問題は、痛覚受容体の働き、神経の鈍化、自律神経のバランス、さらには心理的要因が影響している可能性があります。
このような要因が考えられる場合、肩の張りはあるのに肩こりを感じていないことを放置していると健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、定期的なケアが必要です。