学生の野球肘はなぜおこる?その原因とは??
毎年、学生野球ではピッチャーの肘や肩の問題が議論されます。
- 甲子園での連投
- 練習での投げ込み
- 選手自身の体が昔より弱くなっている
などの原因が考えられ、現状把握やケガの予防の為に肘、肩検診やスポーツテストなどが各地で実施され、野球肘、野球肩の原因がわかりつつあります。
しかし、専門家の皆さんが懸命に子供達のケガの状況を把握して頂いてもチームとしての取り組みが変わらなければ肘や肩のケガの減少にはつながりません。
なぜなら、選手のケガを最も把握しているのは現場の指導者なのですから、
選手の体の状態把握が現在の指導者に求められるスキルだと思います。
少年野球指導者が選手にできる事
小学生のころ好きで始めた野球、それがいつしか勝つための野球になり週末は連日連投、投げる事が楽しくて仕方なかったボールによって肘や肩をケガしてしまい、甲子園出場やプロ野球選手になる夢を諦めなければならない、その様な選手が一人でも減る様にこの記事を書きました。
学生野球で肩や肘をケガする原因
それは大会数が多い事です。
近年、投球制限が各大会で実施されつつありますが、
少年野球では年間の出場できる大会数も制限すべきだと考えます。
✔ 都道府県のNO.1を決める大会
✔ 全市優勝を決める大会
✔ 各区の大会
✔ 議員さん主催の大会
✔ メーカー主催の大会
✔ 少年団主催の独自大会
など
とにかく公式戦(試合)が多すぎです。
肘や肩のケガの原因には
✔ ボールの硬さ
✔ 投球フォーム
✔ 練習量の多さ
などもあるかと思いますが、大会の多さに問題があると思います。
投球数と投手の関係
考えてみてください。
上記の少年野球の大会に各1大会出場したと仮定します。それだけでも年間7大会になります。
1回戦で負けてしまう大会もあれば、優勝する大会もあると思います。
1大会平均4試合だどすると、それだけで少なく計算しても28試合です。
各2大会に出場すると14大会になります。1大会平均4試合だとするとそれだけです56試合になります。
強いチームだと年間100試合〜150試合するところもあると聞きます。
昨年コロナで長期中断したメジャーリーグでさえ週5〜6試合、7月〜10月の間に60試合です。
日本の少年野球の試合日程はどう考えても異常です。
それだけの試合を少年野球では週末に凝縮し4月中旬から11月上旬まで1日に2〜4人の投手が1日2試合、多い時は3試合投げなければなりません。
私がコーチをしている連盟が今年度より1試合70球の制限を設けましたのでそれを元に投球数に換算すると
1試合70球、56試合だとすると3,920球になります。
全国大会の常連チームだと年間100試合~150試合もするところもあるそうです。
そうなると100試合で7,000球、150試合だと10,500球になります。
それをチームの誰がどれだけ投げるか?
4人のピッチャーがいたとして、シーズン通して4人の投手が同じ投球数であれば負担も軽減するとは思いますが、大会もベスト8くらいなると強豪揃い、エースが連投するケースも少なくありません。
エースにかかる負担は言うまでもありません。
投球制限は各地で実施され始めています。
しかし、その投球数をどのように管理しているのでしょうか?
高校野球でさえ大会は高野連が一括管理していますので大会中の投球数の管理ができますが、練習試合の投球数までは管理しきれていません。
それが試合ごとに主催者の違う少年野球では管理する事はほぼ不可能と言っても良いでしょう。
✔ なるべく連投にならないように
✔ ピッチャーの後にキャッチャーはやらない
など言われますが、選手が多い時代の少年野球ならピッチャーやキャッチャーは特に指導しなくても数名の選手がこなす事ができました。
しかし、1チームに所属する選手が少なくなった現在では計画的に育成していかないと、昔以上に1人の選手が抱える負担が大きくなってしまいます。
少年野球の指導法について
今後はより計画的に選手を育成する事が指導者に求められるスキルだと考えます。
スポーツである以上、負けたいと思って試合に望む選手はいないと思います。
勝ちたいと思う気持ちを尊重する事はとても大切な事ですが、それ以上に指導者が熱くなってしまう事は避けなければなりません。
連日、連戦が続けば選手達も疲労が溜まり動きが悪い選手、連投で肘や肩が痛い時もあります。
しかし、子どもたちは痛みを抱えていても監督に「行け!」と言われたら痛くても投げるしかありません、試合に出続けるしかありません。
監督が選手たちの将来を考えながらいかに勝ち負けにこだわり過ぎず試合を組み立てていくことが少年野球における名監督なのではないでしょうか?
エース不在のチームをつくる
各学年にチームのエースと言われる選手が存在すると思います。
しかし、そのエースの事を考えるならエースに頼りすぎていると卒団後、学年が上がった時にどこかで肘や肩をケガして潰れます。
「少年野球の時は良かったのにね!」
「高校で肘が痛くて手術したらしいよ」
そんな悲しい知らせは聞きたくありません。
私が小学生の時に一緒にプレーしたエースも少年野球時代での連投、中学でシニアで野球をするも高校生の時に肘を手術してピッチャーができない体になってしまいました。
その様な選手を一人でも減らすために少年野球ではエースに頼らないチーム編成を考える取り組みをしていかなければならないのではないでしょうか?
ナゼ、甲子園での投げすぎが注目されるのか?
それはデレビ中継がありメディアが取り上げるからです。
最近は海外で野球を学んできた専門家が沢山いて、日本の野球はクレイジーだ!と言われているようですが、甲子園での投げ過ぎは素人がみてもわかります。
✔ 炎天下の中一人で投げぬいた
✔ 決勝まで一人で勝ち上がって来た
と言うことが美談として取り上げられますが、その後肩や肘を壊して投げられなくなってしまっている選手が沢山いるということも頭に入れておかなければなりません。
仮に少年団野球のテレビ中継があったなら
午前中投げてたのまた投げてるよ!?
肘、肩、大丈夫
2試合連投して3試合目はキャッチャーかい!!
監督、選手潰す気か?
とSNSで批判されるかもしれませんね(苦笑)
周りから見られない閉鎖的な世界だからこそ我々指導者が選手を守らなければならないのです。
少年野球がケガの予防にとりくむべき事
- 年間に出場できる大会数に制限を設ける事
- 全員ピッチャー、3人キャッチャーの育成
1.年間に出場できる大会数に上限を設ける事
試合があるから選手は全力で投げなければなりません。
つまり、出場できる大会の数を制限すれば良いと考えます。
シーズンのはじめに出場大会を用紙に記入してそれを各市区町村の連盟が管理してそれ以外の大会は出場できなくする。
大会が多い事に加え小学生の場合、土日祝日しか試合ができません、しかも雨などの天候不良で延期になることもあります。その為日程が重なり1日に何試合もしなくてはならない状態に陥るのです。
年間の出場大会数を制限する事で結果的に投球数は抑えられるのではないでしょうか?
2.全員ピッチャー、3人キャッチャーの育成
なぜ、少年野球の段階でポジションを固定してしまうのかも疑問を感じます。それぞれ成長や経験を考慮して時期は考える必要があると思いますが、全員をピッチャーとして育てて頂きたいと思います。
- 4年生までに投げれる選手
- 5年生になったら投げれそうな選手
- 6年生になれば投げれそうな選手
6年生の春までに全員ピッチャーができればエースの負担も軽減できます。
野球をやっている以上、教育や経験の面からも選手は一度試合のマウンドに立たせるべきです。
なぜなら、ピッチャーの気持ちを考えられる様になるからです。
きっと野手として守っている時の声がけが変わる事でしょう!
キャッチボールで塁間が届けばそれより短いマウンドからキャッチャーまでは届くはずです。
あいつはピッチャーに向いてないと決めつけるのではなく全員にチャンスを与えましょう!!
コントロールが悪いのは指導者がキャッチボールを正しく指導ができていないからです。指導者のコーチングが悪いからだと指導法を考えましょう!
小学生の段階で投げすぎて将来のある選手の可能性を奪わない事が少年野球における指導者の役割だと考えています!
まとめ
- 少年野球における肘や肩のケガの原因は大会数が多い事
- 肘や肩をケガさせない為には投球数の制限プラス年間の大会出場数の制限!
- 投球数の管理をするのは指導者の役割
- 育成プランをつくり6年生の春には全員ピッチャー、3人キャッチャー
未来ある子供たちが夢を目指し続けられる環境と指導を常に考えていきたいと思います。
長くなりましたが最後までご覧頂きありがとうございました。