更年期障害と肩こりのメカニズム
更年期は、主に40代後半から50代にかけての女性が迎えます。
体内のホルモンバランスが大きく変化することが特徴なのですが、このホルモンの変動が大きくなりすぎたり、急激に減少することでさまざまな体調不良や日常的に不快な症状が現れます。
その一つに肩こりがあります。
更年期の肩こりは、単なる不良姿勢や過度な疲労ではなく、ホルモンや自律神経の変化により発生します。
しかし、不良姿勢や疲労による慢性的な肩こりを感じている方は更年期による肩こりとは複雑に絡み合って症状が強くなる場合があります。
ここでは、更年期に肩こりが起こるメカニズムについて詳しく解説します。
1. ホルモンバランスの変化
更年期になると、卵巣の機能が低下することでエストロゲンという女性ホルモンの分泌が減少します。
エストロゲンは、血管の弾力性を保ったり、筋肉の緊張を緩和する作用を持っており、それにより肩や首の周囲の筋肉を緩和させる役割も果たしています。
エストロゲンが減少が起きる事で、筋肉の緊張を緩和させることが難しくなり、血行が悪くなりやすくなります。
このため、肩や首の筋肉に血液が十分に届かず、筋肉がこわばることで肩こりを感じやすくなります。
2. 自律神経の乱れ
更年期にはホルモンバランスの崩れに伴い、自律神経の働きも乱れやすくなります。
エストロゲンはイライラなどを緩和させる作用がありますが、それが急激に低下することで今まではそれほど気になっていなかった言葉や行動にもはんのうしてしまい、イライラしてしまったりします。
この現象は交感神経(興奮や緊張に関与)と副交感神経(リラックスに関与)の2つがありますが、更年期にはこのバランスが崩れることで、交感神経が優位になってしまうからです。
交感神経が過剰に働くと筋肉の緊張が続きやすく、血管も収縮するため血流が悪化します。
このため、食いしばりや肩をすくめたりすることが多くなり肩や首周りの筋肉が緊張することで肩こりが生じる原因となります。
3. 血行不良
ここからは更年期によって起きたホルモンバランスの変化と自律神経の乱れが引き起こした症状により引き起こす体の変化により肩こりが発生するメカニズムについてです。
ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れにより血管が収縮することで肩や首周りの筋肉に血液が届きにくくなります。
その状態が続くと、筋肉に十分な酸素や栄養が供給されにくくなることで疲労物質が蓄積しやすくなります。
これが「痛み」や「こり」の原因になります。
血行不良による酸素不足と疲労物質の蓄積が発生します。
筋肉中の乳酸などの疲労物質を体内に溜めこむことで、それがさらなる筋肉のこわばりや痛みを引き起こし、肩こりが慢性化することもあります。
4. ストレスの影響
更年期には、ホルモン変化に伴う肩こり以外の様々な症状が発生します。
その症状は改善には個人差があり、心身共に不安な時期です。
そのためストレスを感じやすくなります。
加齢や体調変化に対する心理的な不安やイライラも増えがちです。
この精神的なストレス交感神経を緊張させ肩こりを悪化させる一因となります。
精神的ストレスによる筋緊張は肩だけでなく全身の筋肉を緊張させます。
これの一つの症状として肩こりの悪化があります。
5. 不眠・睡眠の質の低下
更年期にはホルモンバランスの急激な変化によりホットフラッシュなどが発生したりすることで夜中に目が覚めてしまう事があります。
その為、睡眠の質が低下しやすく、疲労の回復が十分に行われない状態が続くと肩こりを引き起こします。
特に睡眠不足や睡眠の質の低下は、筋肉の修復と回復のバランスが上手くおこなわれなくなり疲労が蓄積することで、肩こりを引き起こしやすくします。
睡眠の質の低下による筋肉に疲労蓄積すると睡眠中に回復すべき筋肉が十分に休めず、更年期に発生する不眠は長期化することが多くそれに加え日々の負担が積み重なることで、肩や首周りの筋肉が慢性的に疲労し肩こりとして症状を発生させることになります。
6. 運動不足
更年期は家事育児に追われ日々の運動ができていないこと年齢的な体力の衰えに加え更年期による体調不良などで運動量が減少する傾向があります。
運動不足により筋力が低下するとことで体幹筋力の低下による姿勢の悪化や肩首の筋肉も低下し肩や首の重さが負担となり肩こりを引き起こしやすくなります。
更年期による肩こりまとめ
更年期の肩こりは、単に筋肉の問題だけでなくエストロゲンなどの女性ホルモンのバランスや自律神経の乱れによる血行不良、ストレス過敏、睡眠の質の低下、運動不足など、さまざまな要因が重なって発生します。
このように複合的な原因があるため、更年期の肩こりの解消にはホルモン治療をおこないながら自然治癒力を高める鍼灸や整体を併用しながら生活習慣の改善が効果的とされています。
更年期の症状の程度は人によって様々ですが、体調が悪い時に無理に運動やストレッチを行うのは逆効果になることもあります。
自分の体と向き合いながら体調の良い時はウォーキングなどの軽い運動やストレッチ、マインドフルネスや深呼吸をする時間を意識的につくることが大切です。